おとしだま

 喪のある風景

うしろを振りむくと
親である
親のうしろがその親である
その親のそのまたうしろがまたその親の親であるというように
親の親の親ばっかりが
むかしの奥へとつづいている
まえを見ると
まえは子である
このまえはその子である
その子のそのまたまえはまたその子の子であるというように
子の子の子の子の子ばっかりが
空の彼方へ消えいるように
未来の涯へとつづいている
こんな景色のなかに
神のバトンが落ちている
血に染まった地球が落ちている

               『山之口獏詩集』